2009年5月8日金曜日

自転車操業バンザーイ

出典:長沼伸一郎著 現代経済学の直観的方法

1章 資本主義経済はなぜ止まれない    

        1.1 資本主義経済の中枢部を解剖する

止まれない資本主義 

さてここでは、資本主義経済というものの最大の中枢部にはそもそも何があるのかということについて見てみるわけだが、それ以前の問題として、どうも現代の日本や米国のように経済的繁栄を遂げた国に住んでいて、経済官僚などが新聞で言うことを聞いていると、何かこの人たちは頭がおかしいのではないかと思えることが多いのではないだろうか。 大不況の時などはともかく、好景気のただ中にある場合でさえ「来年度に何%の経済成長を行うには・・・」などという言葉を平然として発するのを聞いていると、これだけ繁栄したというのに人間はまだ経済を拡大させねば気がすまないのか、という感想を抱くのも無理のないところである。
 しかしこれは別に経済学者の頭がおかしいわけでもなければ、日本や米国の国民が飽くことを知らない貪欲な国民性をもっているわけでもない。成長を続けなければならないというのは、資本主義というシステムが必然的に持たざるを得ない一つの宿命だからである。(そしてそれゆえにこそ炭酸ガス排出問題なども抜本的な解決がなされないのである。)
 ではどうしてそんなことになってしまうのだろうか。その最も直接的な理由をずばりと言えば、それは金利というものがあるからである。現在の大多数の日本企業(別に日本企業には限らないが)は、大量の資金を銀行から借りている。実際、巨大な工場だの高価な製造機械だのを導入する際には、そのための資金は大抵はそういった借金で調達したのである。
 ところが銀行から借りた金には利子という鉄の鎖がついていて、企業は毎年その利子を払わなければならない。言い換えれば、借りた資金を前より肥らさない限り利払いはできないわけであり、そのためにはひたすら売上げ拡大に邁進しなければならないことになる。
 米国のある実業家がしみじみと述懐して「資本主義というものはモーターサイクルのようなものだ。それは止まれば倒れてしまう」と言っていたというが、全くその通りなのであって、資本主義社会に生きている以上、巨大企業といえどもこういう自転車操業が当たり前なのである。
 一般常識から見れば、こんな借金で成り立っている組織はひどく不健全に見える。普通ならば、何かを売って得た利益の中からその一部を工場増設などの資金に充て、さらにそこから上がった利益を次の年にまた増設資金に回し、などといった具合に自分の持ち金だけで徐々に事業拡大を行っていくのが健全なのではないかと思えるだろう。
 実際昔の英国の企業などはこういう健全なやり方をとっていた。だがこの方法には明らかに一つの限界が存在している。それは一言で言えば速度がのろいのである。例えばある事業を行うのに必要な資金を貯めるのに10年かかるとしたならば、当然のこととして10年後まではその事業には着手できない。
 ところが別の企業家が銀行へ出かけていって、1日でそれだけのまとまった資金を借りてきてしまったとしたならばどういうことになるだろう。経済社会とは早いもの勝ちの世界である。そのため最初の企業家が10年後にやっと資金を貯めて工場を建てた頃には、作るつもりだった製品は、この1日にして忽然として出現したライバルの手によってすでに世の中じゅうに満ち溢れ、もはや参入の余地は失われていることだろう。
 昔の英国においてそうした「健全経営」が可能だったというのは、つまるところ競争がまだ緩やかであったということに尽きる。要するに金持ちであってもこうした自転車操業に移行せざるを得ないというのが、弱肉強食の資本主義社会に生きる者の宿命なのである。



やめられないんですね~止まれないんですね~

こわいですね~ 金利という鉄の鎖

資本主義 止まればこける 自転車操業



つづく

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