2009年5月11日月曜日

生活レベル ワンランクUPしませんか

出典:長沼伸一郎著 現代経済学の直観的方法

パン屋の事業拡大
 ここで伝統社会の中の小さな町で、百年も前から同じ窯を使って代々パンを焼いているパン屋の一家について考えてみよう。このパン屋は小さいながらも一つの企業であるが、町の中の限られた人口にパンを供給しているのだから、町の人口が増加しない限り、パンの生産量は増やせないし、また増やす必要もない。まあ要するに古き良き時代の家族的企業である。
 この一家が必要とするお金はと言えば、家族の生活費の分を除くと、小麦など原材料を買う金、あとはせいぜい窯が傷んだ時にそれを修復するなどの維持費ぐらいなものである。そしてそれらはパンを売った代金ですべて過不足なくまかなわれる。要するに突発的な災害でも発生しない限り、拡大も縮小もなく安定的にこの経済状態を維持することができる。
 ところが「資本主義的人間」の目からすると、こういう経済状態というのは到底容認できない前近代的体質なのである。彼らにとっては、この平和な町の住人は現状に満足して安逸をむさぼり、現状を打破しようという努力を怠る怠惰な連中である。
 しかしパン屋の立場からすれば、現状を打破せよと言われても少々面食らうことだろう。まず売上げを伸ばそうといっても、パン屋にできることといったらせいぜい値段の高い高級な菓子パンを売り出すとか、あるいは隣町に進出してそこのパン屋の縄張りを侵略するとかいった行動に出ることぐらいしかない。
 そしてまた、隣町のパンの市場を本気で制覇しようとするなら当然パンの生産量を倍にしなければならず、したがって窯も増設せねばならないだろう。今まで商売にかかる費用といえばせいぜい原料費と維持費ぐらいだったのに、窯の建設費用--当然ながら金額は前者の比ではない--が必要になってしまう。
 確かにそういう事業拡大が本当にできれば生活レベルを一段上に引き上げることはできるが、それだけの「リフトエンジン用燃料」を備蓄しようと思ったならば、それこそ狂気のような貯蓄マニアにでもならなければどうにもならない。だがここでくだんの「資本主義的人間」は待ってましたとばかりに入れ知恵するのである。要するに、あなた一人でその全部を貯める必要などない。皆から借りれば良いではないか。


貯蓄マニアになる必要はありません・・・借りれば良いではないか

つづく

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