2009年7月30日木曜日

幸田露伴「努力論」を読む 第五章-2-4

【人生の流れを変えるこの「一点の智」】編述者■渡部昇一
 第四の《張る気》の要因として、まれな事例だが「智の光輝」があげられる。
 発明発見をした人たちの伝記を読むと、彼らわ智の燭光によってある事象に一端を知って、たちまち張る気を生じて取り組み、歳月を無視し困難をいとわず目的達成まで頑張っていることがわかる。智の光が輝けば気はいよいよ張って、気が張れば智慮学才はいよいよ拡大されて、自ら意識することなく自己の最高能力を発揮する。
 もともと智の威力は、ちょうど燭火のようなものである。燭火は外界が暗くなるほどその威力を増し、昼間のように明るくなるとまったく威力を失う。それと同じように智識は、社会の知的レベルが低くなるに従って威力を増し、どんな微小な智識でも暗闇世界では燦然と光り輝くのである。一点の星でも暗黒の空では輝くように、わずかばかりの智識が一点の光明として社会の暗闇を破ると、これを見出した人はどれだけ勇気づけられることだろうか。
 ニエプスやダゲールが光線が他物に及ぼす力の差などがあることを知って、「写真」を発明したのであるが、文字どうり無知の暗闇の中に光を投じて「捕影の術」を完成したのである。

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